BAKERU」 プロジェクト

「世界のBAKERUに出会う in Los Angeles 」前編

世界が今よりもシンプルだった大昔、私たちの周りには神聖でおそれ多いものごとがあふれていました。昔の人々は、それらへの祈りや感謝を表わしながらさまざまな伝統や文化を作り、郷土芸能の中に今も息づく「なにかに “化ける”」という行為も、祈りや感謝のかたちのひとつであると言えるでしょう。お面をつけた自分がスクリーンの中で “化ける” 事ができるインスタレーション作品 “BAKERU” は、そんな東北の郷土芸能に学びながら作られた、あたらしい表現です。伝統のもつ価値が次の世代へ、ゆるやかに繋げられて行くことを願い作られました。

そんな東北の“BAKERU”が、世界の“BAKERU” に会いに行きました。

古くから受けつがれてきたものには、伝統や技術、文化そのものといった、豊かな世界観が内包されています。世界中に伝わる “BAKERU” にはどんな世界観があり、そしてそれらには、どんな共通項が存在しているのでしょうか?

JAPAN HOUSE Los Angeles「BAKERU: Transforming Spirits」展に際して、“東京鹿踊”とネイティブアメリカン“ラコタ族”のアーロン氏の共演を現地で撮影した作品です。

<出演者>

Aaron ten Bears(アーロン・テン・ベアーズ)

ミュージシャンであり、役者、伝統的なダンサーでもあるアーロンは、オクラホマで育った、オグララ・ラコタ族です。全国のパウ・ワウで、北部の伝統的なダンスの展示 / 教育プログラムを行ってもいるアーロンは、常に彼の伝統文化を受け入れるために、ラコタの言語、哲学、式典、ダンスなど積極的なアプローチを行ってきました。

TOKYO SHISHI ODORI(東京鹿踊)

2013年6月、首都圏在住の岩手県一関市舞川地区の出身者と、郷土芸能のポテンシャルを信じる有志を中心に結成。
300 年間受け継がれてきた東北の芸能「鹿踊」を、国際都市東京で「今」をいきるものたちが踊る。
www.to-shika.tumblr.com

<世界のBAKERU に、会って、きいてみた。>

東京鹿踊と共演してくれた、アーロン氏にラコタ族にとっての“BAKERU”について聞いてみました。

―ペイントやレガリアを身に着け、“変身”する意味とは。

アーロン「ペイントやレガリアを身につけることは、とても神聖なプロセス。この“変身”はとてもスピリチュアルなもので、伝統的なネイティブアメリカンとして、自分が『何者であるか?』ということを、直接あらわすものです。」

※レガリアー儀式用の装飾品や衣服など。それを所有すること自体が、なにかの象徴となるような物品のこと。

―顔や身体へのペイントについて。

アーロン「顔や身体へのペイントの使い方は、戦士のそれぞれの、個人的な『メディスン』を反映させるものです。私たちラコタは誰もが、個人的な『メディスン』に従うことで、問題を解決することができると信じています。ペイントは、そういった自分自身の『力』を引き出すことができるのです。」

※メディスンー薬・治療といった意味を超え、その人間の力や行為、またはその人そのものをあらわす事も。また、もっとおおきな現象、力、神秘をあらわす場合もある。




―顔のペイント、とくに赤や白といった要素に込められる意味。

アーロン「わたしのペイント=メディスンは、多くの、神聖なものを讃える意味をもちます。目のまわりの赤い帯は、根気、忍耐、知恵をあらわします。目から出される白い稲妻。これは知性、命、力、ワキニヤンへの尊敬をあらわしています。そして、白い雹のスポットは、自分自身の身を守るものです。」

※ワキニヤンーワキンヤンとも。ネイティブアメリカンの部族に伝わる神鳥のこと。スー族のなかでは、くちばしと蹴爪だけの存在だともいわれている。

「世界のBAKERUに出会う in Los Angeles 」後編へつづく。