「BAKERU」開発ストーリー
「BAKERU」のはじまり
「BAKERU」の構想は、東日本大震災後のWOW仙台メンバーの座談会から始まりました。東北に住む自分たちが今なすべき表現とは何か。話し合いの中で、半ば必然のように「東北」というキーワードが上がりました。自分たちの現代的な感性を通して、地域の歴史や文化を違った角度から捉える作品が出来ないか。
そんな想いから「BAKERU」の構想が生まれました。
話し合いの中で特に関心が高かったのが、ナマハゲや鹿踊などの東北各地に伝わる郷土芸能。なぜこのような文化が今も受け継がれているのか。漠然としか知らなかった地域文化への理解を深めることからプロジェクトははじまりました。
伝統と精神性を学ぶ
私たちは東北各地に伝わる郷土芸能を学ぶ為に郷土芸能に詳しい二人にお話を伺いました。一人目は「縦糸横糸合同会社」の小岩秀太郎さん。岩手県出身で自身も故郷の郷土芸能である「行山流舞川鹿子躍(ぎょう ざんりゅう まいかわ ししおどり)」の継承者である小岩さんに、現代の郷土芸能の継承と「変身する」演者の心理状態などについてお話を伺いました。
二人目は、東北大学大学院教育情報学研究部 准教授の佐藤克美先生。モーションキャプチャや CG アニメーションを用いて、郷土芸能で行われる舞踊(ぶよう)の学習と継承支援を行なっている佐藤先生に、先端技術を用いた伝統へアプローチについてお話を聞きました。
このようなリサーチを進めることで、伝統への興味関心の問題や、芸能の所作とそこ込められた意味、学習の方法などが少しずつ見えてきました。ここで得られた様々な情報は「BAKERU」の演出や体験方法の大きなヒントとなりました。
同時に、生きた現場の声を聴くことで郷土芸能が持つ豊かな精神性と奥深さの一端を知ることができました。
伝統の再解釈と再構築
東北の郷土芸能についての知識を深めつつ、具体的な表現や体験のデザインを考えていきます。郷土芸能をそのまま再現するのではなく、私たちの解釈と表現、そしてちょっとした遊び心を加えることで、子供たちでも感覚的に楽しみ、理解できるような表現と体験を目指しました。
各芸能が持つ世界観を生かしながら、WOWならではの表現ができないか。
試行錯誤を繰り返しました。
「BAKERU」のまなざし
自分たちのルーツを探し、その土地の精神性に向き合ったことで東北の伝統芸能をテーマにした「BAKERU」が生まれました。伝統芸能や伝統工芸など、昔から受け継がれているものには、技術や思想、文化といった受け継がれるべき理由が存在しています。先人はその時代の先端技術を駆使し、知恵を絞り、常に新しい表現に挑戦してきました。
私たちも歴史の最前線にいる表現者として、伝統に学びながら新しい表現を開拓していきたいと考えています。東北の風土が生んだ伝統文化に、まったく新しい表現を通して触れてもらうことで、その価値を次の世代へ受け継いでいきたい。そんな想いをこめた「BAKERU」をたくさんの人に体験してもらいたいと思っています。